壊れた土壁、土蔵の壁の応急処置、シート養生について

能登半島地震の発生から4週間となりました。 被災地では壊れた屋根のシート養生など応急処置に奔走される大工さん、屋根屋さんの姿を見かけますが、今日は壊れた土蔵や民家の壁の応急処置について。
写真は奥能登地震後の被災家屋の冬仕舞いをするために屋根に上がった、土蔵妻壁の昨年暮れの様子。 よくみると冬の季節風にたたかれる前でありながら、すでに下げ縄と呼ばれる土蔵妻壁の鉢巻部が風化して、とろけてしまっているのがわかります。 土壁の風化・劣化です。

下げ縄の風化など劣化が進む土壁

これを放置すると建物の劣化が進み、やがて屋根下地部分にも雨水が侵入し、雨漏りが始まります。

 そこで必要になるのが落ちかけた壁のシート養生です。

壊れた土蔵・土壁をどうするかDSCF5545

ここまでの被害を受けた土蔵ですが、修復はともかくも、所蔵されている大切なものを取り出すこともしなくてはなりません。 建物の劣化を防いで、遠くない先に修復するかの判断をするまでの間、また近隣への安全配慮との意味からも、屋根の雨漏り対策とともに、壁のシート養生をしたいものです。
 
【シート養生の準備=貫き伏せ、胴縁押さえによる下地作り】
応急処置の準備段階、まず用意するものは、貫(ぬき)や胴縁(どうぶち)、コウチ スクリュー ボルト、ブルーシートと留め付ける釘ビス類です。 次に壁土を押さえ込むために、貫材をコウチスクリューボルトで残った壁土を押さえ込むように下地柱のある所に固定します。この際グラつくことなく残っている土壁は、まだ耐力要素になっているので、敢えて落とすことはしません。

しっかりした土壁から貫で押さえるDSCF2256
壁土に落下しかけた土蔵の処置_01

【シート養生】
そして今度はシート張り。土壁を押さえ込むために据えた貫などを下地としてシートを留めつけて行きます。シートが破れないように胴縁などでシートを押さえて、貫下地に向けてビスを打ち込みます。
シートはブルーシートでもよいのですが、耐候性の高いシルバータフシート(写真のような銀色の耐候シート)を使えば、耐久性が上がります。

壁土に落下しかけた土蔵の処置_シート養生_02

壁のシート養生に絡んでもう一つ。 それは残った壁土も小舞下地も外れていない限り、グラつきがない限り耐震性を担保している耐力要素となっているということです。 片付けたい一心で壁土や下地ボードなども撤去しているところもあるようですが、まずこれ以上崩落したりグラつかないように貫や胴縁で押さえ込むということです。

なお屋根の養生対策についても、過去記事を参考までに掲出しておきます。
濡れた屋根は大変危険ですので、くれぐれも滑落、屋根から梯子への移乗時など、とくにご注意の上作業をなされて下さい。