施工例(災害復旧)

 周辺の盛り土は強震動で崩れ去り、急峻な崖地に立っているように見える民家。 これは新潟県中越地震発生により全村避難となった、旧山古志村(現長岡市山古志)の住宅である。 震災と、それに追い打ちをかけるように襲った19年ぶりという豪雪に遭いながらも立ち残った数棟の建物のうち、比較的構造被害が少なく二階建ての増築部分4間×4間部分が、辛うじて地山部分で立ち残り、それを修復することとなったもの。 除雪も出来ぬまま多くの家が倒壊した中で、建ち残った数少ない民家の持ち主であるHさんは、山での暮らしの砦をつくり守り続けてきた、先代の労苦を偲んで修復を決意された。 

工事では、まず建物が倒壊しないように、倒壊防止とシート養生など応急処置を施した。 建物は計画段階で立ち残った部分のなかで、すべての生活空間を再レイアウト。 「山古志復興モデル」の工事予算範囲でという条件であった。

写真の通り残った建物を安全な場所に移動させるためまずは基礎を構築。 建物を水準レベルまで高揚げ(ジャッキアップ)して、新しい基礎位置まで曳家作業で移動させる。 移動後は雪下ろしなど屋根雪の処理を考えて約80時計回りに回転移動させた。位置を基礎の真上でピタリとあわせてすでに新しい基礎の上に据えられた土台の上にジャッキダウン。 あとは通常の大工工事での修復作業となった。 

限られた予算の中で、二階の内装工事は省略したが、浴室窓からは八海山などの越後三山も見れるよう間取りレイアウト、広々LD8畳和室を確保しつつ、断熱性能にも優れた再生民家となった。 この建物修復後は、孫を連れた長男がしばしば訪ねるばかりか、その後の地域復興の足がかりにもなったことは言うまでもない。 

地盤災害からの復旧

地盤災害と一口に言ってもその原因、災害の態様と対処方法は異なる。代表的なものとしては、傾斜地を整地した宅地等で見られる切り盛り地盤における不同沈下、もう一つは地盤の液状化にる不同沈下である。いずれも変位のひどい場合は、側方変位という横移動を伴うこともあり、建物の基礎からの根本的な対策工事が必要となる場合が多い。

とくに噴砂を伴った地盤の液状化被害では、根本的な対策工事をとるには膨大な費用がかかり、相当な費用をかけて対策工事をしても、再沈下や再変位の懸念も否定できない。

知識と経験豊富な建築専門家、施工業者とのパートナーシップが求められるところである。